解体寸前の建物の評価 その1 based on a true story
実姉が福岡市で就職して安価なアパートに住んでいた。 当時同じ福岡市の大学で苦学生の小生、奨学金を借りていたが、それはそれはわずかなお金であり、アルバイトをしながら生活していた。 ちなみに卒業後13年間掛けて奨学金は返済した。
まだ20代の優しい姉は安月給にもかかわらず、たまに小生に生活費 を手渡してくれていた。 いわゆるお小遣いである。
実姉をほめてはいけないが、弟思いのどこに出しても恥ずかしくない 優しい長女であった。
ちなみに小生はロクデナシのバイクが大好き理系男子であった。面目ない。
蛇足ながらロクデナシは『陸でなし』と書く。…建築用語であることは 過去に記載している。 陸屋根を『ロクヤネ』と読まず、『リクヤネ』と読む建築家がたまに居るが その様な人物を信用してはいけない。
実姉は㈱福岡○○の社長秘書をしていたが、短大出た手の女性の給料がいい訳も無く、唐人町の地下鉄駅から徒歩10分くらいの住宅街の中の 木造セメント瓦葺きで経年劣化著しいボロアパートに住んでいた。
安月給では家賃35,000円/月のアパートしか住めなかったのであろう。 その苦労には頭が下がる。
そこで事件は発生する。 時はバブル経済の中、2階建のボロアパートは鉄骨造6階建のテナントビルに変身予定となり、土地を大家が手放すことになった。 大家の都合で建物を解体するから出ていけとの通達である。 不動産屋経由で郵便ポストに書面が入っていた。
建物所有者が賃貸借契約を解約する場合には6ヶ月の猶予期間をおいて予告するという契約に基づき、立ち退きを要求する…と書いてあった。 現在であればSNSにその書面が拡散されて、大変な事になるであろう。 途方に暮れた姉は会社の上司に相談して事態の収拾を図ろうとした。
せっかく会社の近くに住んでいるのにいきなり宿無しを強いられるのである。 その会社の上司は素敵な御仁であり、不動産屋と大家に面談して、 ①代替えの住居(賃貸アパート),②引越費用,③敷金,礼金の返還,④慰謝料を 要求したのである。
しかもちゃんと委任状を交して代理人とし法的にも問題なかった。 3ヶ月程交渉して④の慰謝料は駄目だったが、既存アパートの近くの 別の同程度の賃貸アパートに引越が完了した。
3ヶ月掛かった理由は慰謝料よこせとごねた部分と聞いた。 結果、元来、慰謝料が発生する訳も無く、せめて今よりいいところに 引越させろと提案し、木造アパートからRC造のアパートに決まり、家賃も 同じ金額にしろと交渉しその通りになった。
その上司が交渉した事は(やったことは)大学生の小生には ほぼ〇クザと大差ない印象であった。
後日聴取すると新しく新築されたビルの会社と姉の会社がお取引のある 関係だったらしい。 だから『あまあまの補償』だったとの由。 ボロアパートの他の8名の住人がどの様な補償を受けたのかは知る由もなかった。 人脈の大切さやパイプ、そして社会勉強をさせて頂いた。
…その2に続く 令和7年5月3日
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